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気になった話をする。

『恋する寄生虫』、寂寥感のある純愛の話

メディアワークス文庫より出版されている『恋する寄生虫』の紹介。

著者は"三秋 縋"さん。

「何から何までまともではなくて、 しかし、紛れもなくそれは恋だった」という紹介文が印象的な作品。ジャンルとしては「切ない恋愛」を描いた作品です。

総評:こんなにも心が悔しくぽっかりと隙間を開けられるような読後感を味わうことになるなんて。そんな、苦しみのある恋の話が読みたいならば買い。

社会に馴染めなかった人達が心を許せる人に出会い、救われ、恋をする話。

社会不適合者が諦めの中で見つけた救い

「ねえ、高坂さんは、こんな風に考えたことはない? 自分はこのまま、誰と愛し合うこともなく死んでいくんじゃないか。自分が死んだとき、涙を流してくれる人間は一人もいないんじゃないか」

失業中の青年・高坂賢吾と不登校の少女・佐薙ひじり。一見何もかもが噛み合わない二人は、社会復帰に向けてリハビリを共に行う中で惹かれ合い、やがて恋に落ちる。

重度の潔癖症を抱える主人公・高坂は、社会に馴染めず自らの人間社会への適性の無さを確かめるように転職と失業を繰り返している。そして、自分の見込みのなさを思い知らされるように日々を暮らしていく中で心を擦り減らして良く毎日だった。

そんな生活の中で、あるとき同じように社会に馴染めず不登校となっていた少女・佐薙に出会う。

作品の雰囲気と印象

物語の季節は冬。本文からは冬の寒さや静かな寂しさ、社会不適合者にとって何ら救いとならない現代社会の生き辛さや息苦しさが伝わってくる。

そんな重苦しい情景の中で、自分の行き場所の無さを感じていた中で同じような存在に出会った二人は、いつしか惹かれ合うように恋に落ちていく。

「自分はこのまま、誰と愛し合うこともなく死んでいくんじゃないか」、「自分が死んだとき、涙を流してくれる人間は一人もいないんじゃないか」という耐え難い苦しさを抱えた中での出会いに救われた気持ちになっていく。

この想いは本物なのか、人間原理への問いかけ

そしてそんな人の心情に対して"寄生虫"というキーワードを通じて、この作品は「なぜ人は恋をするのか」を読んでいるうちに考えさせてくる。

何のために恋をするのか、その恋や想いは「誰」の意思によるものなのか。

人は自らの意思で恋をするという選択を行ったのか、それとも人体機能において合理的な理由があった上で恋を意思で選んだものだと錯覚しているのか。

二人の触れ合いを通して、そんなことを考えさせられる。

独特な世界観、真っ白に包まれるような読後感

幸せを得た二人、それと相反して二人を縛り付ける社会への不適合性。

そしてある回答を得た二人。社会不適合者として始まった二人の選ぶそれぞれの答え。

そこにはやはり社会へとうまく溶け込むことのできなかった人々の悲しみが漂っているように思うし、しかしそうでなければ得られなかった救いに導かれる幸福。

泣き出して吐き出してしまいたくなるような、きっと誰もがどこかに抱えているような感情がそこにある。

登場する人物たちの選ぶ答えについては「なぜ?どうしてそうしてしまうの?」と感じる自分がいる一方で、そうでなければ自分という存在が成り立たないのだなという同意できる自分もいる。

何から何までまともではなくて、しかし、紛れもなくそれは恋だった。

-ライトノベル