タペストリー(TPR):コーチなどブランドの集合体

2019年1月15日

皮革・アクセサリーの高級ブランド

タペストリー(TPR)は皮革製バッグやアクセサリー、靴などを扱う高級ブランドです。コーチやケイト・スペードなどのブランドを保有することで知られています。

会社の成り立ちは1941年に創業した皮革製品の工房で、女性向けにバッグを百貨店などで販売することでラグジュアリーブランドとしての地位を確立してきました。現在では直営店や百貨店への出店を含めると世界中で1,000店舗以上を展開しています。

元々はコーチという社名でしたが、2017年10月に社名を現在のタペストリーに変更しています。これは2015年に高級靴ブランドのスチュアート ワイツマン、2017年に同業ブランドのケイト・スペードを買収したことで、今後のブランド集合体としての企業戦略を反映する意図がありました。

コーチの公式ウェブサイト

コーチは高級ブランドに属してはいますが、アウトレットへの注力や値引きに頼りがちな傾向から一時期はブランドイメージが低下していました。現在はその戦略を見直し、値引き率の低下や採算性の悪い店舗の閉鎖やデザインの刷新に取り組んでいます。

ティーン層に絶大な人気のセレーナ・ゴメスとタイアップする戦略が功を奏している一方で、小売業界におけるアマゾン(AMZN)との戦いや値下げ攻勢をかける競合、出店している百貨店の客足の鈍化といった要素に注視する必要があります。

競合企業としてはカプリ・ホールディングス(CPRI)マイケル・コースが挙げられます。こちらもファッションブランドとして、マイケル・コースやヴェルサーチを傘下ブランドにバッグや時計やアパレルなどを手掛けています。

日本でも両者の製品を女子大生や若いOL世代が多く所有しており、ターゲット層が近いことが分かりますね。販売比率はアメリカが約50%、アメリカ外全体では約40%で、中国や香港などは約14%です。

構成ブランドの概況(2018)

ブランド名2017年2018年
コーチ92%72%
スチュアート・ワイツマン8%6%
ケイト・スペード22%
品目2017年2018年
ハンドバッグ・アクセサリー$43B$48B
$28B$31B
アウターウェア$11B$12B

タペストリー全体としてのブランド別売上比率、商品比率が上記です。次に各ブランドの商品比率を見てみましょう。

コーチ

年次売上$4.22B
直営店987
従業員13,500人
品目比率
女性向けハンドバッグ54%
女性向けアクセサリー18%
男性向け20%
その他8%
地域比率
北米57%
その他43%

ケイト・スペード

年次売上$1.28B
直営店342
従業員5,500人
品目比率
女性向けハンドバッグ55%
女性向けアクセサリー21%
その他24%
地域比率
北米83%
その他17%

スチュアート・ワイツマン

年次売上$374M
直営店103
従業員940人
品目比率
98%
その他2%
地域比率
北米64%
その他36%

株価とチャート

2014年にCEOを交代して様々な業務改善を行っていますが、前述したアマゾンやマイケル・コースとの戦いが嫌気された影響で、株価が30%下落しました。その後も2018年末の米中関係の悪化の影響を受けており、上値が重い状態が続いています。

値引き攻勢をかけていたマイケル・コースも大体同じような下落と上昇の形をとっています。しかしタペストリーが下落する状況でも、高級ブランドの中でもルイ・ヴィトンやロエベなどを擁するフランスのLVMHは目立った調整もなく右肩上がりを続けることがあるなど、絶対的なハイブランドとして確立できていない状況がボラリティを拡大する点を覚える必要がありそうです。

企業データ

ティッカーTPR
企業名Tapestry, Inc.
タペストリー
本社アメリカ・ニューヨーク州
上場市場NYSE
予想PER(2019.1)13.26倍
PBR3.25倍
予想配当利回り5.02%

業績

タペストリーは現在、ブランドイメージの低下によって離れた顧客を取り戻すための再編を行っており、コーチやケイト・スペードといった傘下ブランドがいかに今後活躍するかにかかっています。2018年の売上上昇についてはケイト・スペードの買収完了が寄与していますね。

長期投資の観点では営業CFが右肩上がりでないと話になりませんが、不調に見えた営業CFについて2016年から右肩基調を取り戻しつつあるように見えます。CEO交代後の再編が機能し始めたとみられるでしょうか。

営業CFマージンを見ると右肩下がりな点が気にかかります。このまま下がり続け目安となる15%を割り込み、それが続くようであれば市場優位性のある企業とは言えなくなります。

キャッシュフロー

配当

配当を2009年に開始し、以降増配を続けていましたが2014年からは増配を停止しています。気になるのが配当性向の高さで、2015年以降は常に高水準で100%を突破している年もあります。

持続可能な配当性向の目安として40%が語られることから、減配しないアメリカ企業的な頼もしさを感じつつも是正されるべき点に感じます。

EPSとBPS

EPSは1株あたりの利益を表しており、右肩上がりであれば順調に成長を続ける企業とみなされます。ブランド再編ということもありパッとしないEPSとなっています。投資家からは優秀な皮革調達を持つコーチと買収を完了したケイト・スペードが結びつくシナジーを期待されており、それに対する回答が今後のEPSに現れるでしょう。

BPSは企業の手堅さ、企業の純資産の推移を表しています。右肩上がりである点が評価できると思います。

ROE

ROEは株主資本に対する利益率、経営の効率が現れる指標です。目安として12%以上を維持していることが効率的な企業と言われています。タペストリーのROEは全体的には右肩下がりであり、目安を割り込むギリギリ、つまり正念場と言えます。

タペストリーは今後の成長を中国市場に託しています。中国が今後も活性化を続けるか否かで今後の業績が決定づけられるでしょう。最近の予想では中国市場の減速の可能性が指摘されていることもあり、タペストリーだけでなく高級ブランド銘柄全般にとって見極めの時期が迫っていると言えるでしょう。


2018年末から2019年頭には、、米中貿易摩擦やアップル・ショックなど中国市場の減速を示唆するニュースが市場に動揺を与えています。中でも高級ブランド銘柄に対する影響が大きいです。