「元本確保=損しない」という説明の違和感

無知に対する元本確保型商品の罠

企業型DC(確定拠出年金)制度が私の職場でもいよいよ導入されました。

事前説明会では説明に訪れた信託銀行の方が「絶対に損したくない人は元本確保型」と念仏のように繰り返していたのが印象的でした。

本来は自分で自分の将来のために年金を運用する制度なので、自ら金融知識をつけて考えなければならないことが大前提ではあります。しかしながら企業側の都合で導入が決定したDC制度に対して、金融知識が皆無な人に対して「元本確保型は損しない」という伝え方はどうなんだろうと思いました。

確かに元本確保型は額面を維持するという意味では正しいでしょうが、インフレ率などを考慮すれば相対的に価値が減少していく可能性があるということを触れるべきではないでしょうか。

今回はインフレ率と定期預金の金利差をチェックしてみました。

インフレーションするという意味

物価がインフレ、つまりインフレーションするというのはどういう意味でしょうか。

単純に言えば物価が2倍にインフレすると、かつて50円で購入できた物の価格が100円になることを指します。ちなみに対義語はデフレです。

物価のインフレが続くという事はその割合の分だけ、同じ金額が示す価値が低下していることになります。つまりインフレ率と同じだけ額面自体も増加しなければ、相対的に貧しくなっていくことを意味しています。

日本のコアインフレ率の推移

日本のコアインフレ率 via TradingEconomics

日本のコアインフレ率の推移を確認してみると、先進国らしく右肩下がりのトレンドを描き低インフレ率に収束していっていることが見て取れます。直近では1%にやや届かない程度を維持しています。

年によってはマイナスのインフレ率となっていますが、基本的にはプラスとなっています。日銀としての物価目標としてもインフレ率2%を目指しているので、今後も基本的にはインフレ率はプラスとなることが期待されます。

元本確保型商品の金利

2017年1月末2018年1月末2019年1月末
0.010%0.010%0.010%

例えば企業型DC向けとして提供されている元本確保型商品「三菱UFJ銀行確定拠出年金専用1年定期預金」では、直近3年間はそれぞれ年利0.010%となっています。

コアインフレ率が約1%なのに対して、金利は0.010%です。

つまりこの差の分だけ毎年相対的に貧しくなっていっているという事です。

こういった基本的な事柄さえも説明の場でされないのは不用意な発言が法的にも制限されているための事情だとは思いますが、国として投資という文化を国民に根付かせたいのであれば、素人であっても等しく共有される知識として認知されるような仕組みをぜひ作ってもらいたいものです。

そういう意味で、元本確保型=損しないという説明には違和感があります。あくまでも額面を維持できるだけで、相対的な価値が減っていく可能性は他のアセットと同じように存在すると伝えるべきではないでしょうか。