【T】銘柄分析:AT&Tは世界最大の通信事業からコンテンツ企業へ転換中

2020-06-26

インフラという安定を地盤に成長機会を探るAT&T

AT&T(T)は世界最大かつ最古の電話会社と呼ばれる企業です。

その由来は1876年にグラハム・ベルが起業した、ベル電話会社をルーツとしているためです。ベル電話会社はその後アメリカン・テレフォン&テレグラフ(旧AT&T)と名称が変化させつつ、1974年には反トラスト法違反から事業を分割しています。2005年には通信事業大手のSBCコミュニケーションズに買収され、新会社として今のAT&Tとなっています。

買収されたためベル電話会社の直系のAT&Tは途絶えたものの、そのAT&Tというブランドは買収後も受け継がれています。

AT&Tは現代では電気通信事業を主力事業としつつ、最近ではワーナーメディアによるコンテンツ事業を手掛けています。

電話事業については、日本の携帯電話業界を思い浮かべるとイメージしやすいと思います。家電量販店などに行けばドコモやauが端末と自社回線サービスを販売していますが、アメリカでも同じように至る所でAT&Tの姿を見かけます。もはや通信回線は生活必需品と言っても過言ではないため非常に安定したビジネスですが、同時にここからの大きな成長もあまり見込めません。

そこでAT&Tはワーナーメディアの買収に巨額の資金を投入し、成長機会を伺っています。

ワーナーメディアと言えば『ゲーム・オブ・スローンズ』の製作で知られるHBOなど、有力なスタジオを傘下に抱えていることで知られていますね。現在はそのコンテンツ力を活かしてNetflixのようなHBO Maxを始め注目を集めています。

通信事業

AT&Tの通信事業では、企業や一般消費者向けにサービスを提供しています。

提供するサービスの内容としては、全国的なワイヤレス通信サービスと関連する機器の提供、インターネットや音声/ビデオ通信の提供、企業向けのIP通信サービスの大きく3つに分類できるます。

ワーナーメディア

買収を完了したワーナーメディアは、AT&Tの独立したセグメントとして位置付けられています。

コンテンツの制作と配信、映画やテレビシリーズ、ゲームなど様々なフォーマットを介して提供しています。代表的なブランド名としてはケーブルテレビチャンネルのターナー(TNT)、HBO、ワーナー・ブラザースが知られています。

HBOは前述したように高い評価を得たテレビシリーズの製作で知られていますし、ワーナー・ブラザースはバットマンなどDCコミック作品が有名です。

HBO Maxのサービスが開始されたことで、AT&T自身が今後はプラットフォームを兼ねることになります。ワーナーメディアが持つ有力なコンテンツはこれまでNetflixに提供されてきましたが、これからはHBO Maxを通じて自社プラットフォームにNetflixユーザーを引き込み収益性を高めることが期待されます。

ディズニーやNBCユニバーサルなどコンテンツを保有する競合も同様の戦略をとっており、前述した期待感もありながらプラットフォームの群雄割拠となる今後の恐ろしさもありますね。

Xandr

テレビ広告市場を手掛けるためのブランド名としてXandrを提供しています。

企業の基本情報

企業名AT&T Inc.
ティッカーT
セクター通信サービス
時価総額約2099億ドル
予想PER9.3倍
配当利回り7.00%
増配年数15年

10年間の株価の推移

10年間の業績の推移

10年間のキャッシュフローの推移

10年間の配当の推移

10年間のEPSと発行株式数の推移

10年間のROEとROAとROICの推移

直近の会計年度末のバランスシート

コメント

全体の売上高は増加傾向にあるように見えますが、買収によりセグメント自体が増加している結果です。

元々の通信事業セグメント単体では横ばいが続いており、対照的にワーナーメディアのセグメントは目に見える成長となっており、今後のAT&Tの成長がコンテンツ事業にあることは間違いないように思えます。粗利益率は50%超を安定しており、安心感があります。

営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローは近年増加傾向です。また営業キャッシュフローは一定額を安定しつつ、営業キャッシュフローマージンも25%以上を維持しており、収益性に問題はないでしょう。

ただし資金効率性はそれほど高効率というわけではありません。

AT&Tの戦略への考え

コンテンツ事業を次の成長の種としているAT&Tですが、根本にある戦略は自社で提供する通信事業にユーザーを引き付けるための魅力としてコンテンツを活用するシナジーと思われます。

通信事業は言わずもがなですが、コンテンツ事業も歴史があり産業としては成熟しています。成熟産業であるため、消費者自身も自らがサービスに何を望んでいるのかを熟知しているとも言えます。

例えば通信事業であれば優れた回線品質と価格のバランスで、コンテンツ事業であれば面白く感動や話題となる作品を求めています。一見すれば優れたコンテンツと回線がセットになる戦略は納得感がありますが、思うようにシナジーを得られない可能性が少なくないように感じます。コンテンツへのアクセスを制限してしまえば人気を犠牲にしてしまい本末転倒ですし、せいぜいがセットで導入すれば少し安くなる程度ではないでしょうか。これだとあまりシナジーとして強いとは思えません。

依然として主力事業である通信事業のシナジーを考えるのであれば、通信帯域などに関連した企業の買収がより効果的だったのではないかと素人目には感じるところです。とはいえベライゾンなど通信事業は今後も苛烈なシェア競争が続くと思われるため、舵を取る判断は正解だったとも考えられます。難しいですね。

ワーナーメディアの持つコンテンツは世界中に熱狂的なファンを数多く持っていることから、得難い競争力を持った事業だとは思います。Netflixを始めとする新興勢力も独自のコンテンツ制作に大金を投じていることもあり、こちらも激しい競争の時代に突入すると見られています。成長のための販管費と収益のバランスが難しい時代が続くでしょう。

安定的なキャッシュフローを背景とした配当貴族銘柄として観測することが当面の有力な選択肢でしょうか。